こんにちは!
風営法と国際業務を専門とする鈴鹿行政書士事務所です。
理想の物件が見つかり、いよいよ風俗営業許可の申請へ!…と、その前に立ちはだかる大きな、大きな壁。それが「使用承諾書」です。

賃貸物件で開業する場合、大家さん(オーナー)や管理会社から「この場所で風俗営業をすることを承諾します」という印鑑をもらったこの書類が、風営法の許可申請に絶対に必要となります。
しかし…

大家さんに使用承諾書をお願いしたら、怪訝な顔をされた…」
「『風俗営業なんてとんでもない!』と、頭ごなしに断られた…」

このように、使用承諾書がもらえずに途方に暮れている経営者様は、本当に多いのです。
でも、諦めるのはまだ早い!今回は、大家さんとの交渉を成功に導くための具体的な「交渉術」と、すぐに使える「書式サンプル」を、私たち専門家が徹底的に解説します!

なぜ大家さんは「使用承諾書」を断るのか?その心理を理解する

なぜ大家さんは「使用承諾書」を断るのか?その心理を理解するの画像

交渉を始める前に、まずは相手の気持ちを理解することが大切です。なぜ多くの大家さんは、使用承諾への署名をためらうのでしょうか?その背景には、主に3つの不安があります。

不安①:「風俗営業」という言葉への悪いイメージ

多くの方は「風俗」と聞くと、違法なサービスやトラブルといった、ネガティブなイメージを連想しがちです。「自分の所有する物件で、面倒なことには巻き込まれたくない」というのが大家さんの本音なのです。

不安②:建物や他のテナントへの悪影響の懸念

「夜中に騒がしくされるのではないか?」「柄の悪いお客さんが来て、他のテナントに迷惑がかかるのではないか?」といった、騒音や客層、ゴミ出しなどの問題で、物件全体の価値が下がることを心配しています。

不安③:書類にハンコを押すことへの法的な責任感

「よくわからない書類にハンコを押して、後で何か法的な責任を負わされるのではないか?」という、未知の書類に対する純粋な恐怖感もあります。

私たちの交渉の目的は、これらの大家さんの不安を一つひとつ丁寧に取り除き、「あなたになら、安心して物件を任せられる」と思ってもらうことなのです。🤝

【実践交渉術】誠意と安心で大家さんの心を動かす5つのステップ

誠意と安心で大家さんの心を動かす
5つのステップを説明する画像

では、具体的にどうすれば大家さんを説得できるのでしょうか。感情的に訴えるのではなく、論理的かつ誠実に、以下の5つのステップでアプローチしましょう。

ステップ①:事前準備を万全に!手ぶらで突撃はNG

お願いに行く際は、手ぶらではいけません。「お願いします!」の一言だけでは、相手の不安を煽るだけです。以下のものを準備し、あなたの「本気度」と「誠実さ」を伝えましょう。

  • お店のコンセプトがわかる簡単な事業計画書:どんな客層をターゲットに、どんな雰囲気の健全なお店を目指しているのかを具体的に示します。
  • 完成済みの「使用承諾書」:後述するサンプルを参考に、あなたが記入できる部分はすべて埋めて持参します。相手の手間を極限まで省く配慮が大切です。
  • 清潔感のある服装と手土産:言うまでもありませんが、社会人としての基本マナーです。

ステップ②:「風俗営業=健全な営業のための許可」と説明する

大家さんの誤解を解く、最も重要なパートです。
「今回お願いしている風営法の許可は、いかがわしい営業をするためのものでは全くありません。むしろ、警察の監督のもと、法律やルールをきちんと守って健全な飲食店を営業するために必要な、行政上の手続きなんです」と、丁寧に説明しましょう。「接待」という言葉の意味も、正しく伝えられると良いでしょう。

ステップ③:具体的なトラブル防止策を提示する

「騒音」「客層」といった大家さんの不安を先回りして解消します。
「騒音については、防音対策をしっかり行い、カラオケのボリュームも近隣に配慮します」
「お客様に迷惑行為がないよう、スタッフ教育を徹底します。客引きなども一切行いません」
「万が一、何か問題が起きた際の責任者はすべて私です。大家さんにご迷惑はおかけしません」
このように、具体的な対策を約束することで、信頼度が格段にアップします。

ステップ④:賃貸借契約書も再確認する

そもそも、物件を借りる際の「賃貸借契約書」の使用目的欄が「店舗」「事務所」などになっているか確認しましょう。もし、風営法の営業が明確に禁止されている場合は、交渉のハードルはさらに上がります。

ステップ⑤:最終手段として行政書士の同行を依頼する

「どうしても自分一人ではうまく説明できる自信がない…」
そんな時は、私たち行政書士が交渉に同行することも可能です。風営法の専門家である第三者が同席し、使用承諾書の法的な意味合いや、許可制度について客観的に説明することで、大家さんも安心してハンコを押してくれるケースが多くあります。

すぐに使える!使用承諾書の書式サンプル

警察署に提出する使用承諾書には、決まったフォーマットはありません。しかし、以下の項目が記載されていればOKです。こちらをコピーして、ワードなどで作成してみてください。


使用承諾書

私(承諾者)が所有(または管理)する下記の不動産物件を、下記の者が風俗営業の営業所として使用することを承諾します。

【物件の表示】
所在地: (建物の住居表示、登記上所在を記載)
名 称: (ビル名・マンション名を記載)
構 造: (鉄骨造など)
使用部分: (〇階 〇号室)

【使用者の表示】
住 所: (あなたの住所を記載)
氏 名: (あなたの氏名を記載)

上記のとおり相違ありません。

令和〇年〇月〇日

【承諾者の表示】
住 所: (大家さん・管理会社の住所)
氏 名: (大家さん・管理会社の名称と氏名) 

【書き方のポイント】

  • 承諾者の住所・氏名・押印は、必ず大家さん本人にしてもらってください。
  • あなたが記入できる部分はすべて埋めてから持っていくのがマナーです。

もし使用承諾書を断られたら…?

もし使用承諾書を断られた時の説明する画像

誠意を尽くしても、どうしても使用承諾書断られた場合、どうすればよいのでしょうか。

  • 代替案:賃貸借契約書への目的の追記
    警察署によっては、賃貸借契約書の「使用目的」の欄に「風俗営業(スナック)を営むため」といった文言が明記されていれば、使用承諾書の代わりとして認められる場合があります。ただし、これは非常にハードルの高い交渉です。
  • 最終手段:物件を探し直す
    残念ですが、使用承諾書がなければ風営法の許可は下りない可能性大です。ご縁がなかったと割り切り、次の物件を探すのが最も賢明な判断です。その際は、最初から「風俗営業可」の物件を専門に扱う不動産業者に相談しましょう。

まとめ:交渉は誠意と準備がすべて!困ったら専門家を頼ろう

まとめ:交渉は誠意と準備がすべて!困ったら専門家を頼ろうと言ってる画像

大家さんから使用承諾書をもらうための交渉術は、小手先のテクニックではありません。「この人になら安心して物件を貸せる」と思ってもらえるような、誠実な人柄と、周到な準備がすべてです。

それでも、大家さんとの関係性や、ご自身の交渉力に不安がある場合は、私たち行政書士を頼ってください。あなたの代理人として交渉に臨み、許可取得までの道のりを強力にサポートします。その一手間が、あなたの夢の実現への一番の近道になるかもしれません。